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意識不明の重体だった桂枝雀さんが19日に逝ったとニュースで聞いた。

枝雀さんの落語は奈良の史跡文化センターで師匠の米朝さん、枝雀さん、 若手の3人会で聞いたことがある。
柔らかい物腰で落ち着きのある米朝さんの落語とは違い、ＰＯＰで弾け、見ても聞いても楽しめる落語だった。 舞台から落ちるんじゃないか？！と心配するほど元気で華があり、めまぐるしく変わる表情は愛敬タップリで一時も目が離せなかった。 言いよどんだり、間違ってもそれが何ともいい味になる。真面目な話はまるで僧の説法のように静かに心に染み入る。 ご本人が『噺は緩急が大切です』とおっしゃっていた通りのめりはりのある落語だった。

舞台が終わるや否や私は急いで席を立ち裏口へ走った。ちょうど枝雀さんが私服で出てきた所だった。 舞台の着物姿とは違い、帽子にジャケット、首にはカラフルなマフラーを巻いていて、 なんて粋なおじさんなんだろう！とすっかり惚れ込んでしまった。その表情や歩くは舞台とは逆に楚々とした素朴な雰囲気の人にも見えた。 声をかけようと思ったが、関係者に囲まれたまま、あっという間に待たせたタクシーに乗り込んでしまわれたので、 私と枝雀さんの一生に一度の逢瀬はそれで終わりだった。

テレビで米朝一門の記者会見のダイジェストを見た。米朝さん、南光さん、ざこばさんらが枝雀さんについて熱く語ってらしたが 私も同じ気持ちだった。。。彼のような落語家はきっと二度と現れないだろうし、あれほど愛された落語家も居ないだろう。 英語落語等のチャレンジ精神も素晴らしかった。躁鬱の傾向があり、鬱の時期に芸事への一生懸命さが今回の行動をさせたんではないかと米朝師匠がおっしゃっていたが、 そうであればあるほど本当に残念だ。

『私、自分の落語を聞いて笑います（^^）』とおっしゃっていた枝雀さん、 あちらへいったら是非ご自分の落語を聞いて朗らかに過ごして下さいね、心よりご冥福をお祈り致します・・・。